取得時効と消滅時効について

【時効について】

時効には取得時効と消滅時効の二種類があります。

 

《1》取得時効とは

取得時効とは長期間にわたって他人のものを自分の物かのように振る舞っているとその物が本当に自分の物になることです。

 

その長期間とは《善意無過失》か《悪意・過失》かで年数が変わってきます。

悪意・過失の場合は《20年》善意の場合は《10年》です。

 

例えば、AがBの土地の売買契約をしたが、錯誤によって無効な契約だったとします。すると本当はBの土地なのにAが占有していることになりますが、この場合のAは善意無過失なので10年間その土地を占有していればそのままAの土地になります。この善意無過失は《占有開始時》のみであればいいので極端にいえば2日後に自分の物でないと知っても10年間で良いのです。

逆にAが勝手にBの土地だと最初から《知っていながら占有》したとします。この場合は悪意なので、自分の土地にするには20年間占有しなければなりません。

悪意にしろ善意無過失にしろ時効が満了すると《起算日》にさかのぼりAのものだったということになります。

善意無過失のAが2000年3月3日にBの土地を占有しだして2010年3月3日になったとします。するとBの土地は2000年の3月3日からAの土地だったということになるのです。

 

※この取得時効で自分のものにできるのは、所有権のみでなく《地上権》や《地役権》なども対象になります。

 

〜他人の占有でも取得できる〜

例えばAがBの土地を占有してるとして、Bがこの土地をCに譲渡したとします。

するとこの土地はどちらのものになるか、それはBがCに土地を《譲渡》したのが《時効前が時効後》によって変わります。

譲渡したのが《時効前》であればCが登記しようが何しようがAのものになります。理由はそもそも真の所有者とBと占有者Aは《当事者に類似した関係》だからです。

譲渡したのが《時効後》の場合は先に登記を得た方のものになります。これは二重譲渡の関係になるためです。Aは時効によって土地が自分のものになったのに登記もしないでほっておいていたとするならAにも落ち度があるのです。

 

〜賃貸人が時効取得できるか〜

原則的にはできません。なぜなら《自分の所有物にする意思で》占有しないと取得時効が成立しないからです。

たとえ20年間そこを占有し続けたとしても、20年間賃料を踏み倒し続けても時効取得できません。

しかし本当の土地の持ち主に「この土地は自分のものです」と《所有の意思があることを表明》するとそこから20年で(悪意のため)時効取得できます。

賃貸人の相続人がその土地を時効取得は原則ではできません。が、こちらもできる方法もあります。それはあらたに《事実上の支配》を開始することです。例えば賃貸人の子が賃貸人が借りていた土地に家を建てて20年間そこに住めばその土地はその子供のものとなるのです。

 

 

《2》消滅時効とは

所有権以外の権利は放置しておくと消滅してしまう時効です。

 

債権は《10年間》抵当権や地上権や地役権は《20年間》で消滅してしまいます。

放置とはどういったものか説明させていただくと、例えば売買代金債権や賃金債権などの債権だと10年間「払ってください。」と言わずにほったらかすなどです。10年未満の消滅時効があるものもあり、飲食料債権などがそうです。1年で時効消滅してしまいます。そういったものもふくめて支払期日を過ぎてからも裁判で払ってくださいと言っている方が勝訴すると《10年間に延長》することができます。

債権では10年で時効消滅しますが、この10年とは《権利を行使できる時》から10年ということです。

この《権利を行使できる時》というのには4種類あります。

 

①《確定期限付》の債権の場合は期日が到来してからの進行します。

(確定期限とはいつ来るか《はっきりしている期限》です。)

例えば3月3日に支払うものは3月3日から時効期間が始まります。

 

②《不確定期限付》の債権の場合も期日が到来してからの進行です。

(不確定期限とはいつ来るか《はっきりしていない期限》です。)

例えば「自分の母親が亡くなったら支払います。」と言えば母親が亡くなった時からが時効期間始まります。

 

③《条件付》の債権の場合は条件が成就した時から進行します。

(条件とは期限とは違い来るかどうかもわからないものです。)

例えば「宅建士の試験に合格したら払います。」といえば試験に合格した時から時効期間がはじまります

 

④期限の《定めがない》債権に関しましては、直ちに進行するので契約したときから時効期間が始まります。

 

大切なのは上記の②と③については期限の到来や条件の成就を当事者が《知らなくても》時効は進行するということです。

そして個人的な都合とは無関係に進行するので債権者が事故にあおうが病気になり何もできない状態になったとしても時効は進行していきます。

時効の利益はあらかじめ放棄できないので、債務者のほうが「代金は必ず払います。今から10年払えなかったとしても時効になったなどとは言いません。」といったとしても本当に10年払わずにいるとこの債権は時効で消滅してしまうのです。

 

 

〜時効には中断ができる〜

このままでは圧倒的に債権者に不利なのでもちろん時効を完成させないようにする制度があります。

それには2種類中断させる方法があります。

 

まずは《請求》です。

請求とは簡単にいえばお金を返してくださいと言うことです。しかし言うだけではダメなのです。口頭で返してくださいというのは《催告》というのですが、この催告から《6カ月》以内に裁判所で訴えを起こさなければなりません。そして裁判所にて《勝訴したときのみ》時効の中断ができます。

口頭の催告しかしていない、訴えを起こしたが後日その訴えが取り消されてしまったり、訴えたが裁判で負けてしまった場合は時効の中断ができません。

そしてこの中断は裁判に勝ったときではなく最初の《催告のときから中断》ということになります。

 

そしてもう一つは《承認》です。

承認とは債務者の方が「お金を借りています。」と債務があることを認めることです。こちらのほうは裁判などしなくても《口頭のみ》で直ちに中断ができます。

制限行為能力者の場合は《未成年者と成年被後見人》は承認の取り消しができますが、《被保佐人》の場合は承認を取り消せないので時効が中断されます。

 


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